生駒山系の北部、交野山には鎌倉時代初期に創建されたと伝えられる岩倉開元寺という山岳寺院が存在していました。ブドウ園の広がる交野市神宮寺の集落から交野山に登る山道は、「石仏の道」として整備されており、山頂からの展望やご来光を楽しむ方々で賑わいます。
石仏の道 - Googleマイマップ
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石仏の道・石造遺物群(交野市指定文化財)
弥勒仏坐像石仏 |
石仏の道という呼称の通り、道中には石仏が点在しており交野市指定文化財として保存・整備されています。弥勒仏坐像石仏は総高180cm、幅約97cmの自然石に刻まれており、岩倉開元寺の傍示石(寺域を示す)であると考えられています。
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資料によると、岩倉開元寺は弥勒菩薩を宗祖と仰ぐ興福寺の末寺であったことが、理由として挙げられています。野仏が日常の風景である生駒山系にあって、弥勒仏の野仏は珍しい存在ですね。
二尊石仏 |
弥勒仏から少し登った池付近の分岐にある石仏で、先ほどの弥勒仏から一転して小さな石仏なので見逃してしまいそうです。資料によると桃山時代の造立で、右側の像は比丘形、左側は阿弥陀如来とされています。弥勒仏の野仏も珍しいですが、この比丘形というのも聞きなれない言葉です。
比丘(びく) パーリ語で bhikkhu、サンスクリット語で bhiksuの音写。仏教に帰依して、具足戒を受けた成人男子の称。修行僧。
お地蔵さんじゃ、ダメなんですね。分かりました。
三尊磨崖石仏 |
三尊が磨崖された巨岩は石仏の道・谷側に面して立っており、しかも石仏は川面に刻されているので知らないと通り過ぎてしまうでしょう。中央の像は典型的な阿弥陀如来坐像、向かって右側は勢至菩薩立像、左側に観音菩薩立像が半肉彫りにされています。
三尊磨崖石仏(左に梵字) |
野ざらしなので風化は進んでいますが、石仏の枠外に陰刻された梵字(阿弥陀如来の種字「キリーク」)を確認することができました。資料によると、中尊の両側に文明十一年の紀年銘を確認できるとのこと。(1479)
阿弥陀如来立像 |
当石仏は前述の三尊磨崖石仏と道を挟んだ正面に立っておられます。光背の向かって右側から尊像のお顔(左目付近)にかけて見られる損傷が痛ましいです。紀年はありませんが、三尊磨崖石仏と同時期の造立と考えれています。
阿弥陀三尊磨崖仏(全体) |
石仏の道をさらに登っていくと右手にすぐソレと分かる花崗岩の巨石を見ることができます。磨崖された三尊像もよく見て取れますが、巨石はほぼ45度左に傾いていて今にも転がりそうな感じがしました。場所は参道の最奥と考えられ、西向きに面していることから極楽浄土への往生を願う意味が込められているのだとか。
阿弥陀三尊磨崖仏 |
写真を補正して水平にしてみました。先の三尊磨崖石仏と同様に両脇には勢至菩薩(右)、観音菩薩(左)の立像が彫られています。風化の度合いにもよりますが、尊像の表現に簡略化が見られるとのこと。
後編は巨石に刻された梵字の数々を見ていきたいと思います。
参考文献
交野市の石造文化財1-私市・私部・神宮寺・倉治地区編-
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